その2  夏の日の秘めごと






7月の上旬。はばたき学園の図書室。

1学期末テストの期間中、学校は午前で終わりなので、

昼食をファミレスで一緒にとる約束をした設楽先輩と紺野先輩。

時間が少し早いため、明日のテスト範囲をさらう事にした。

が、始めて10分も経たないうちに睡魔に襲われる設楽先輩。




紺野「……おい、設楽!」

設楽「……ああ、なんだ」




紺野「設楽、君のその表情、半眼の仏像みたいだな」

設楽「……ああ、そうか」




紺野「……仏像をぶつぞぅ!

設楽「……ああ」



ドス!




紺野「あとほんの70ページじゃないか。設楽、がんばれ!」

微笑むメガネ。

湧き上がる殺意。
(紺野のやつ、いつかペンでつつき殺してやる)







設楽先輩は隙をみてペンでつつき返そうとするがうまくいかない。




と、紺野先輩の注意をそらす名案を思いついた設楽先輩は、紺野先輩に耳打ちをした。

設楽「おい、紺野!大変だ!窓の外を見てみろ!」

紺野「なに?」


設楽「氷室先生がキャトルミューティレーションされてる







よそ見をさせるための設楽先輩の案であったが、なにか紺野先輩の笑いのツボのど真ん中に入ったらしい。


千載一遇のチャンスかと思われたが、椅子から転げ落ちのた打ち回りながら笑う紺野先輩を見て、

いくらなんでも笑いすぎだろうコイツとちょっと引いていると、


司書「あなたたち、出て行きなさい!」


強制的に図書室を退去させられてしまった。





で、こうなる。

設楽「紺野、おまえの体温が気持ち悪い!」

紺野「設楽の手のぬくもりもなかなかに不愉快だよ!」

設楽「お前からは俺の姿が見えないんだから女子を乗せてるとでも思っておけばいいだろ!」

紺野「だったら少しはその減らない口を叩くのをやめてくれ!あと設楽、君、実は自転車乗れないんだろ?! 」



紺野先輩の自転車に2ケツでファミレスへ向かう二人。


ちなみに誰にも話した事は無いが、紺野先輩の愛車の名前はスーパーサンダーバード

先代の名前は雷鳥といったのだが、この雷鳥、中学2年のとき友人のTくん

今日のように海岸線を2ケツをして爆走していた際(運転はTくん)、丁度そこを通りかかった女子高生に、

俺らのスーパーカー実際には紺野先輩のチャリンコ)でドライブしようぜなどと

浮かれたナンパ行為をして(Tくんが)気をとられていた事によりハンドル操作を誤り、2人でダイブ・イントゥ・ブルー

命だけはなんとか取り留めたものの、あわれ紺野先輩のメガネと雷鳥は海の藻屑と消えた。

半泣きになった紺野先輩を見かねたTくんが、彼の広い人脈を駆使して水泳部などを中心とした

サルベージ部隊を召集、派兵したがあえなく玉砕。

紺野先輩は、いまでも愛車雷鳥の沈没ポイントを通ると感傷的になる。

サルベージ部隊玉砕後に行われた玉緒を慰める会と称したBBQ&プロレス大会をふくめて、とても辛い思い出だ。






ファミレスまであと少しの距離に来たところで、背後から2人を呼ぶ声が聞こえた。




??「セイちゃーん!!カイチョー!!」




次へ!

inserted by FC2 system